安達太良山の「ほんとの空」


高村光太郎の「智恵子抄」で智恵子が言った言葉。

「東京には空がない。ほんとの空が見たい。
阿多多羅山の上の青い空がほんとの空だ」 と。

その「ほんとの空」を見に行こうと思った。


これは、1日目に泊まったホテルの前の鏡ヶ池の青空の風景。

「ほんとの空」の下で癒される、本当のおもてなし。
詩人、高村光太郎の妻、智恵子が愛したあだたらの空。
この「ほんとの空」の下に佇み、安達太良山に抱かれた絶好のロケーション。

・・・とは、この日泊まったホテルの宣伝文句に書かれていた言葉だ。


歳をとった最近では、ゴンドラなどである程度上まで上がり、
残りを頂上まで登るというお手軽登山がもっぱらになった。

安達太良山でも、ゴンドラリフトで標高1350mの山頂駅へ。
そこから往復3〜4時間の予定で標高1700mの頂上を目指す。
もちろん、歩くだけならもっと少ない時間で往復できる距離だが、
ゆっくり写真を撮ったり、休憩したりするので余裕を見て行く。

山頂駅でゴンドラから降りて歩き始めた道は、
このように歩き易い道だったが、霞んでいた。


山頂駅から歩きだしてしばらくするとすぐに薬師岳展望台へ着く。


展望台と言っても何も台などはなく、大きな石がゴロゴロしていて、
展望できる場所には、小さな石の祠と小さな釣鐘が安置されていた。


「この上の空がほんとの空です」と書かれているが、
この日のこの上の空はほんとの空ではありません。

昨日の晴天が嘘のように、この日は朝からずっと曇り空で、
この時点では雨は降っていなかったものの、霞んでいて、
見えるはずの安達太良山頂上も紅葉も何も見えなかった。


この展望台からの眺めは行きには全く何も見えなかった。

少し回り道になるが、帰りにもう一度寄ってみたら、
今年は紅葉も遅れていて、真っ赤な紅葉ではないが
このように少しだけ紅葉した様子を見ることができた。


地面を這うようにして枝を伸ばしているので、
ハイマツかと思ったが、五葉松だということだ。
近くには「五葉松平」という地名もある位だ。
強風のために、地面に枝を落としているのか。


登山道は、木道が整備されている所は歩き易くてホッとする。
周囲の木々の色づき具合も木によって場所によって様々だ。


せっかくの紅葉の季節なので赤い葉の写真も入れておこう。


石ころだらけの険しい道も多かった。


仙女平分岐点を過ぎた辺りから木々も赤みを増してきた。


しかし、登山道の歩きも厳しさが増してきた。


上の写真でも上の方の真ん中に見えているが、これは道しるべ。
山の中では道に迷わないよう木にリボンを結んで導いてくれる。
ここでは、岩にこのような日の丸?を描いて導いてくれている。


なるほど、白色と赤色は霧の中でもよく見える。
どの方向へ歩いたら良いか、安心して進める。


頂上まで何とか雨に降られないで到着できた。
しかし、霧に霞んで「乳首」はぼんやりと見えるだけ。
「乳首」とは、安達太良山は別名「乳首山」とも言われていて、
頂上に突き出ている岩が乳首のように見えるからだ。

ここは、みんなが記念撮影をする頂上広場だが、
実は、ここはまだ本当の頂上ではないらしい。

ネットで見ると、この場所を撮った写真の標識は2種類ある。
2年前の写真までは、確かに「安達太良山頂」となっている。
しかし、私も撮った今年の写真では「安達太良山」だ。
つまり、以前はここを記念撮影用の山頂としていたが、
最近では後ろの「乳首」を山頂とした、ということか。


その本当の頂上の乳首へ登ろうとしたが、下りてきた人に聞くと、
上では強風が吹き荒れていて怖かった、鎖場もあるし危ない、
もし上がるなら十分気を付けて下さいよ、と言われた。
若い男性の、こちらが年寄りと見ての忠告だと思われた。
この天気では何も見えないだろうし、危ないならと止めた。

写真を撮って下り始めてすぐに雨が降り始めた。
ぼんやりと見えた乳首もこの雨では見えないだろうから、
ぼんやりとでも見えてまだ良かった、と思うことにしよう。

オヤマリンドウ(エゾリンドウ?)
ミヤマアキノキリンソウ(アキノキリンソウ?)


最後は、ボケた「シラタマノキ」で終わりましょう。


行きの新幹線の中では、これから訪ねる安達太良山の話に夢中で、
乳首が、乳首がとしゃべっていて、ボケているのかと思われたか?

皆さん、乳首、乳首としゃべっているのを聞いても、怪しまないで!


五色沼を歩くへ続く



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