バザールの楽しみ方


写真はトルコ・イスタンブールでのグランドバザールの入り口の一つ。
なかなか同じ出入り口からは出られないとガイドブックにも書いてある程の
何千もの店が入っている、とにかく広大なバザールである。
この入り口から入った宝石屋が並ぶ大きな通りを頭に入れて、
常にその通りの方角を確かめながら進む。

別に何を買うという目的もなくぶらぶらと歩いていると、
次から次へと賑やかに呼び込みの声をかけられる。
それも多くが日本語で話しかけてくるので驚かされる。
ほとんどは「こんにちは」「お元気ですか」などの言葉だが、
女性二人で歩いていると「かわいこちゃん」などと言われて思わず笑ってしまう。
しつこく言われるといけないので無視して行こうとすると、
「もってけどろぼう」などと言う。そんな日本語を誰が教えたのか、いったい。

ずいぶん日本語の上手な人が話しかけてきたので、聞いてみた。
「どうして市場の人がみんな日本語を話せるのですか?」
すると、バザールで日本語のクラスがあって日本語を勉強したのだそうだ。
大勢やってくる日本人の観光客を見込んでのことだが、
このところ不況やイラク戦争やSARSなどでめっきり観光客が減っているとか。

そこで、たまに見る日本人は格好の獲物だから、
興味を持った品物をちょっと立ち止まって眺めようものなら、
もうちょっとやそっとでは放してもらえない。
買うつもりもないので行こうとすると、いくらにするからと値段を下げてくる。
ふふん、安くしてくれるのかと先ずはその値段を頭に入れる。
今来たばかりだからもう少し歩いてみたいと、とにかくその場を離れる。

次々にまた呼び止められる。
興味を持った同じような品物を眺める。
やはり同じように、いくらにするからと値段を下げてくる。
まだ買うつもりはないので行こうとする。
すると更に値段を下げてくる。これまでの店より安い。
しかしまだ買うつもりはないので行こうとする。
すると、もっと値段を下げてくる。
へぇー、そこまで下げたかと心を動かされる。

この辺りから欲が出てくる。 やってみよう!
「これ位なら買っても良い」と言ってみる。
そんな値では問題にならないと言うので、それなら行こうと行きかける。
あちらさんはあわてて、ではこれなら何とかすると少し値を下げてくる。
こちらは落ち着いて、では両方の希望値の真ん中にしようと提案する。
それでは儲けがないと言いつつ少し下げて切りの良い値段を言う。
この辺りが限界かなと判断して、その値段で買う。
結局、半値以下になった。よく憶えておこう。
店の男はあまり嬉しそうでなかったので、やっぱり儲けは少なかったか…。
ということは、こっちの値切りが勝ったか、よし。

しかししかし、なになにそんなに下げるのか?!
では元の値段は一体いくらなんだ?
少なくとも半値には値切らなくっちゃ、って知ってしまった。
俄然バザールでの買い物のおもしろさに目覚めて、次は別の店で。

今度は枚数を買いたいタイル画の安い物を物色していた。
やはり買ってもらいたいから同じように値段を下げてくる。
そこで、同じ物を3つ買ったらいくらにするかと聞いてみた。
本当は5つ買いたかったのだが、それは内緒。(^^;)
3つ買ってくれるのならいくらにすると値段を下げてきた。
ちょっと不満そうにして、他の物を眺める。
じゃぁ5つ買ったらいくらにするかと言ってみる。
ぶつぶつ言いながらも、さすがにまた少し下げてきた。
半値には少し届かなかったが、安い物なのでこの程度が限界か。
店の親爺はご機嫌で、親しげにいろいろ冗談を飛ばす。

実はこの時仲間の人達と一緒だったが、買い物は別行動した。
後で話を聞くと、U氏はTシャツを何枚も定価で買ったそうだ。
ここは値切らなくっちゃ、そのやり取りがおもしろいよ、と得意げにしゃべった。
Tシャツをお土産にもらった人!そのTシャツは定価で買った高い物なんですよ。
大切に着てあげて下さいね。(^^;)


関係者の顔だけ分からないようにガラスで隠しました。(^^;)

エジプシャンバザールでもやはり仲間の人達と一緒に買い物した。
試食したお菓子がおいしかったので、ここではお菓子を値切ることに。
全員で10何個を買うからと安くさせようとした。
しかし、こちらが買うということを見透かされたか、
同じ種類でも入っているクルミの量が違うことを比べて試食させられて、
確かに買おうとしている物の方がクルミの量が多くておいしかったので、
思ったほどには値切れなかった。
この店の親爺はひどく陽気で、「みんな友達」「みんな友達」と言いながら、
その場に居合わせた客も店の人もみんなを集めて記念写真を撮ったりした。
中央の親爺、連れの若い彼女と古い私の肩を引き寄せて両手に花で、
あんなに喜ばせてしまって、大分安くさせたのにまだ儲けさせてしまったか…。

 

トルコで言うバザールとは「屋根つき市場」という意味だが、
屋根つきのエジプシャンバザールの外には屋根なし市場が広がっている。
エジプシャンバザールでの買い物を終えて外へ出て歩いている時、
突然そこらじゅうの人達が大あわてで動き出して騒然とした。
何が起こったのか分からず危険を感じて隅っこへ避難した。
どうやら、売り物の品物を手当たりしだいに車や箱の中などへ放り投げている。
やっと、青空市場は違法で、これは手入れだと事態が飲み込めた。
ジーンズのズボンなどを放り込んでいる若者に「警察が来るのか?」
と尋ねたら、悪びれもせず「そうだ」との返事。
怖いのにそんなことを尋ねて…と夫は呆れていたが、若者は英語を解した。
あれだけあった青空市場があっという間に姿を消して残るは舞い散るゴミのみ。
しかし、警察が行ったら、汚い箱に放り投げていたあの品物を再び売るのだろうな。
違法の青空市場の品物はたとえ安くてもやはり考えものだ…。


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