大連と旅順


大連は、中国の中では東北に位置する港町だ。
海に近いので、海鮮料理がおいしい。
あちこちに広場があり、広場を中心に道路が放射状に延びている。
帝政ロシアと日本の統治を受けていたという歴史的な意味からも、
旧ロシア人街や旧日本人街などへは行ってみたいものだ。


ロシア時代にはニコラヤフ広場と呼ばれ、日本の統治時代には大広場と言われた中山広場は
最も美しい広場と言われているが、その周囲には当時建てられた欧風建築物が残されている。
それら10棟の建物の中でも代表的なのが旧ヤマトホテルの大連賓館。
現在でもホテルとして使用されている。


中山広場を挟んで大連賓館の向かいに建っているのが中国銀行大連分行。
夜にライトアップされると北京オリンピックの五輪マークが映し出されていた。


日本による満州支配の象徴であった旧満鉄本社。
総裁室の見学ができるようだが、我々は外から見ただけ。


旧日本人街の坂道にはそれと分かる古い建物が点在して残っている。
家屋は老朽化して、再開発が進んでいるようだが、
かつての日本時代の高級住宅街を再現する街並みを整備しているようだ。


閑静な旧日本人街に比べて、旧ロシア人街は派手に賑わっていた。
通りには20棟ほどの古い建物が並んでいて、その前には土産物屋も店を開いて、
ロシアの土産物を売り、観光客の呼び込みも激しかった。


旧ロシア人街はこの勝利橋(旧日本橋)を渡った所にある。
日本時代には「日本橋」と言っていた橋が、
日本の敗戦で「勝利橋」と名前を変えたようだ。


大連の表玄関である鉄道の駅舎は最初は帝政ロシアにより建設されたが、
日露戦争後は日本が再建して、天津や北京、上海とも結ばれている。
これは表側から撮った大連駅だが、表側では背の高いビル群の間を
旧式の路面電車が走っている。


アジア最大の面積を誇る星海広場。
(ちなみに、北京市の天安門広場は世界最大だとか)
香港返還を記念して建造されたそうだ。
大連市の市制100周年も記念して建設されたとか。


星海広場を海に向かって歩き海に行き着く所に石のモニュメントがある。
1枚の写真には入りきらないので2枚を繋いでいるが、
新しい歴史を開くという意味で、本を開いた形になっている。
これから新しいページを作るということだそうだ。


大連からは車で1時間位で行ける旅順へも行ってきた。
といっても、旅順には軍事施設があるため外国人が自由に歩くことはできない。
下手をすると身柄拘束されることもあるとかで、ツアーを頼んで行くしかない。
車の運転手と日本語のできる中国人ガイドが我々日本人3人を案内してくれた。
それでも、外国人に開放されているのは「203高地」と「水師営会見所」だけである。
ちなみに、旅順を訪れる観光客は日本人ぐらいのものだそうだ。
特にロシア人は来ないそうだ。そりゃそうだろう。

写真は、「203高地」の入り口。
車を降りて写真を撮れる雰囲気ではなく、車の中から急いで撮った。
運転手が許可証を見せお金を払う間、別の人が車内の人数を調べに来た。


中国の地である旅順において帝政ロシアと日本軍が戦った日露戦争。
日本軍はこの高台を占領して眼下に見える旅順市内に砲撃を加える作戦を立て、
この高台を奪取する戦いが始まり、苦戦してこの203高地を占領した。
この日は霞んでいてよく見えないが、大砲の先は旅順港に向かっている。


日露戦争後、日本軍の司令官であった乃木希典将軍は散乱していた砲弾を集め、
弾丸型の記念碑を建て、戦死者を弔った。
この記念碑には「203」の読みに合わせ「爾霊山」と記されている。

車を降りてからこの高台までは歩いて上がらなければならないが、
車を降りた所で日本語の堪能な高齢の男性が日露戦争について説明して下さる。
その部屋には乃木希典書なる掛け軸もかかっていた。


水師営会見所。
帝政ロシアの総司令官ステッセル中将からの降伏の申し入れを受けて、
日本側の乃木将軍とステッセル中将が会見をした場所である。
元は農家であったこの家を日本軍は衛生隊が使っていて、
会見した場所は手術室であったとか。


水師営会見所の南東に位置する東鶏冠山北堡塁は、
日露戦争時のロシア側の要塞跡で、日本軍との激戦地である。
その入り口には日本の山口から運んだ石でこんな立派な石碑が。


ロシア軍の司令部跡。
塹壕跡や堡塁跡にはこのような生々しい弾痕跡が残り、
その戦闘の激しさをうかがい知ることができる。


「歴史を銘記して国の恥を忘れる勿れ」とでも読むのでしょうか…。
帝政ロシアと日本に占領された当時の中国の人達には忘れられない歴史。
写真右側は、砲弾の形をしているゴミ箱があちこちに置かれていた。
ロシアと日本の砲弾に苦しめられた中国が砲弾の形のゴミ箱とは…。
これは、中国の恨みか開き直りかユーモアか余裕か・・??





目次へ 外国旅行記へ