加賀温泉郷で慰労会


「慰労会」とは、先ず、何の慰労会かといえば、言わずと知れた「あれ」(こちら)である。
「あれ」とは、長男のお嫁さんの産後の世話をするために一家4人を預かった5週間のことだ。
掃除・洗濯・買い物・1日3度の食事+おやつなどの世話は、
ずっと一緒に住んでいれば何てことはない家事であるのだろうが、
70歳台の老夫婦には(自分では老人と思っていないのに都合の良い時だけ「老」と言う)
昔、若かりし頃に子育てで大変だった時代を久しぶりに感じた5週間だった。

年寄り夫婦2人だけの穏やかで静かな気楽な生活に慣れていた身には、
毎日出る山のような洗濯物と、料理作りと、大量の食器類の片付けと、
こちらの思い通りに運ばない時間的制約のストレスなども加わり、
若い時には感じなかった家事労働のきつさは半端ではなかった。

頑張れたのは、5週間経てば終わるという日にちが限られていたからである。
終わってみれば、何てことはなかったとも思えるから勝手であるが…。

5週間が終われば、どこか温泉へ行っておいしい物を食べて慰労会をしよう、
と話していたことも楽しみに頑張れたかなとも思う。

ということで、加賀温泉郷へカニを食べに行ってきました。


加賀温泉郷の中でも泊まったのは山代温泉の「雄山閣」で、
お部屋へ運ばれてきた「かにづくし会席」の最初の2、3品です。
この後次々と食べ切れない程のカニ料理が運ばれてきました。
後ろの何も入っていない大きな皿はカニの殻入れです。


そして、食べ進む内に大きなお皿は殻で一杯になりました。

今回は、カニを食べて温泉に入るのが目的だったが、
山代温泉に着いたその日と翌日は当然ながら散策もした。
先ず、着いたその日は近場を歩いて周辺を見て回った。


山代温泉の源泉。
山代温泉は、旅の僧・行基によって発見されたと伝えられている。
一羽のカラスが岩間から湧き出る湯で翼を癒しているのを見て
温泉を発見したという話から、「烏の湯」と称せられているそうだ。


この源泉のすぐ近くには無料の源泉足湯もある。


山代温泉の総湯、古総湯。
総湯とは、地元民が集う共同浴場のことで、
これは、明治時代の総湯を忠実に復元した古総湯。


上で書いたように、山代温泉はカラスに縁があるようで、
「やましろ温泉通り」の両側には烏の絵が描かれた札が掛かっている。


北国での雪対策の雪吊りは見たことがあるが、
ここでは石灯籠にも、こもが巻かれていた。
通りかかった地元の人にこれは雪対策か?と尋ねたところ、
その通りで、雪が積もって石灯篭が壊れるのだそうだが、
今年は今のところ豪雪とはなっていないので無用の長物か?

実のところ、加賀温泉郷を訪ねた2日間は2日共暖かかった。
それも、異常な暖かさで、4月中旬頃の気温だったようだ。


石灯篭には、ここにもカラスが描かれていた。
このカラスは足が3本描かれているところをみると、
熊野で見た「八咫烏(ヤタガラス)」のようだ。


「霊方山薬王院温泉寺」
温泉鎮護のために薬師如来が祀られている。

さて、翌日はバスに乗って片山津温泉まで行くことにした。
加賀周遊バス「CANBUS(キャン・バス)」というのがあり、
山代・山中温泉方面を周る「山まわり」ルートと、
大聖寺・片山津温泉方面を周る「海まわり」ルートがあるが、
我々はJR加賀温泉駅前から「海まわり」ルートに乗って見所を周った。

このキャン・バスというのは、好きな場所でバスを下りて観光して、
再び乗って好きな場所へ行けるというのが便利で良いのだが、
1時間に1本位しか便数が無いので時刻表を調べて計画的に周らないといけない。
いろいろな施設へ歩いて行ける場所に停留所が設けられているので便利だ。


最初は「北前船の里資料館」でバスを降りて、「北前船の里資料館」を見学した。
明治時代建築の北前船主の広大な屋敷を公開した北前船に関する専門資料館である。

北前船とは、江戸時代から明治時代にかけて繁栄した商売の形態で、
瀬戸内海や日本海を経て大阪から北海道を往復して、莫大な富を得ていた。
北前船は、他人の荷物を運んで運賃を稼ぐのではなく、
船主が荷主としてそれぞれの港で物を売り買いしながら航海したとか。


館内には船模型、船箪笥、引札、遠眼鏡、和磁石、各種古文書が展示されている。


この資料館の建物の北前船主は6隻もの船を所有して巨額の富を築いたそうだ。
敷地面積1000坪、この写真の30畳の大広間には、柱は8寸角のケヤキ、
梁は巨大な松、大戸は一枚板の秋田杉など最高級の建材を使って建てられている。


さて、もう一度バスに乗って移動しても良かったのだが、
たいした距離でもないので歩くことにして、
橋立漁港などを見ながら散策した。


歩いてみて良かった。
店先に大きなタコの足がぶら下がっていた!
漁港の近くなので、いろいろな鮮魚の店があった。


「尼御前岬」からバスに乗って「片山津温泉湯の元公園」で降りた。
「柴山潟」と言われる湖に浮ぶように建つ浮御堂には、
温泉伝説の弁財天と竜神様が祀られている。


冬にはコハクチョウが舞い降りるそうだが、眠りほうけている?カモばかり。

もう一度バスに乗って、最初に乗った「JR加賀温泉駅前」で降りて小旅行は終わり。


ところで、JR加賀温泉駅の北側には何やら巨大な像が見える。
子供を抱いている巨大な金色の観音像が建っている。

景観を際立たせるか景観を損なうか、こんな巨大な観音像の是非はさておき、
新しい命が生まれてその世話をした慰労会の話題の最後を飾るには良いだろうか?



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