夏目漱石の小説「草枕」は、小天(おあま)温泉への旅をモデルに、 熊本の前田家が来客をもてなすために建てた別邸が舞台となっている。 明治30年、当時第五高等学校教授だった漱石がこの別邸を訪れ、 滞在した数日間の出来事を元に小説「草枕」を発表したそうだ。 小説では、この別邸は「那古井の宿」、前田家は「志保田家」として登場、 小天は「那古井(なこい)」という架空の地名で書かれている。 |
「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。 意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」 「草枕」の冒頭の一節だ。 漱石がこう書いた山路へは、実は、我々は行かなかったので、残念ながら写真がない。 有名な「おい、と声を掛けたが返事がない」の舞台となった茶屋がある山路だ。 ここは、下で書く前田家別邸へと続く山道の途中で、「草枕」で書かれた山路ではない。 漱石が前田家別邸に泊まって散策をした道なので「草枕道」なる道標が立っているが、 漱石はこのように山道を登りながらこう考えたのかと私も考えながら道を登った。 |
「小天温泉・那古井館前」というバス停でバスを降りたのに、 どこにも看板が見当たらず、不思議に思っていたところ、 翌日その那古井館を出て帰る時に、その意味が分かった。 旅館はリニューアル工事中だったと上で書いたが、そう、 看板も新しく作り直したのか、バス通りのバス停近くと、 旅館の前に、この日は確かに「那古井館」の看板があった。 「おあま温泉」の「なこい館」、最初はなかなか読めず、 夏目漱石ゆかりの地と聞いても、馴染みがなかったのに、 夏目漱石の小説「草枕」の舞台となった那古井の里として、 こうしてページに書くと、もうすっかりお馴染みさんだ。 |