宇治茶の郷・和束の茶畑
京都府南部にあり奈良市と接する木津川市の「加茂盆地を歩く」を昨年秋に載せたが(こちら)、
あの時と同じく、JR加茂駅から歩き始めて、あの時よりもっと遠く和束町までを歩いた。
ここは宇治ではなくて和束だが、ブランド茶「宇治茶」の生産地で、宇治茶の郷である。
道路側には、「桃源郷」ならぬ「茶源郷」の看板があった。
和束に近づいた辺りからは「和束茶」の幟も見られた。
和束町は山がちな地形で、丘陵の起伏に沿って茶畑が広がっている。
すでに田植えが終わっている田んぼのすぐ上へと茶畑が続いていた。
小高い丘全体がこんな風に茶畑で覆われてもいた。
選原(松尾)地区の、パッチワークのような茶畑。
急斜面の山の上にも傾斜に合わせて広がっている。
見て回った順番が前後するが、これが一番見たかった石寺地区の茶畑。
山裾から山頂近く空まで続く石寺地区の見事な茶畑の写真を見て、
これは「Mizuの部屋」のネタに…と、実際に見てみたいと行ってみた。
ところが、行ってみると、何と!黒い茶畑が広がっていて驚いた。
和束の町は、西から東へと順番に暖かくなるようで、
西に位置する石寺地区は4月下旬には早くも茶摘みが始まるそうだ。
その時期にも関係して黒い網で覆った茶畑が多かったのだろうか。
黒色だけでなく、銀色のアルミホイルで包んだような茶畑もあった。
何故、黒い網を被せているのか、車で通りかかった土地の人に取材した。
茶摘の時期を遅らせるため、茶葉が育ち過ぎないように被せるのかと思ったが、
その理由は、思いもよらないことだが言われてみれば納得のできる理由だった。
太陽に当らないようにする方がお茶の葉の緑色が濃くなるそうだ。 なるほど。
光を遮られると、光を求めて葉を開き葉緑素を増加させるという植物の本能だ。
お茶そのものを飲むだけでなく、最近ではお茶の加工品が多いということで、
お茶の加工品は、お菓子にしても何にしても緑色が濃い方が好まれるので、
わざわざ黒い網を被せて、緑色の濃い茶葉を収穫するようにしているのだとか。
それと、最近ではお茶といえばペットボトルのお茶の需要が多いこともあり、
(急須でお茶を入れることを知らない若者が増えているというニュースを聞いた)
それで、このような黒い茶畑が増えているのか、なるほど、と納得できた。
ただし、
勿論、上質のお茶は燦々と降り注ぐ太陽に当てて伸びた茶葉を摘むそうだ。
その茶葉は、最近では、ほとんどは機械で摘むそうだが、
特別高級なお茶は、「一枝二葉」を、手摘みするそうだ。
植えたばかりの赤ちゃん茶の畑も見つけた。
幼児期の茶畑と、もう少し育った青年期の茶畑も見つけた。
これらも上に載せた美しい茶畑へと変貌していくのだろう。
そしてこれは摘み取った後の茶畑。 緑の新芽が摘まれて茶色に見える。
なお、茶畑のあちこちで風車が立っているのが気になった。
このことについても、車で通りかかった地元の人に尋ねた。
新茶の芽が霜の被害にやられないようにとの霜対策だそうだ。
地面に近い所の冷たい空気の層と上の暖かい空気の層を混ぜて、
茶葉に霜がつかないようにする「防霜ファン」というものだとか。
釜塚地区の茶畑。
釜塚山の茶畑は、先人が鍬で傾斜地を開墾し拡げたもので、
現在でも、山の茶畑と麓の民家がすぐ側で隣り合ってある。
もう1ヶ所、原山地区は円形で芸術的な茶畑なので見たかったのだが、
この日は車ではなくハイキングで行っていたので、少し遠くて断念した。
小高い丘の上に「天空カフェ」というのがあるというので行ってみた。
かなり急な坂道の階段を登った上に、畳を敷いた小屋があった。
その前に、和束町の農業振興の拠点として、住民が交流する施設である
「和束茶カフェ」に寄って新茶をいただいて、今年の新茶を買った時に、
「他の店のことを尋ねるのは悪いが、天空カフェへはどこから上がるのか?」
と尋ねた。 ところが、悪かったどころか、ここで尋ねたのが正解だった。
「天空カフェ」でお茶を飲むには、この店で申し込んでから行くのだ。
お湯の入ったポット、急須、湯こぼし、湯のみ、茶葉、お茶の入れ方の説明文
が入った袋を持たせてくれて、天空のお茶室で自分でお茶を入れてくつろいだ。
「天空カフェ」からは360度見渡せて、眺めも良かった。
近くにも、遠くでも、あちこちに茶畑が広がっていた。
こんもりとした木立に鳥居が見えるが、
安積親王の陵墓だそうで、茶畑に囲まれていた。
では、皆さんも、天空カフェでお茶をいただいている気分で、
さ、さ、どうぞ、どうぞ。
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