美山かやぶきの里
京都の北の方に日本の原風景・かやぶきの里があることは知っていた。
しかし、実際に人々が暮している民家を見物に行くことはためらわれた。
観光客が大勢押しかけて日常の暮らしを無遠慮に観光気分で見物する、
ということが良いことか悪いことか判断に苦しんだからだ。
その底にあったのは、『三田』の「長谷の棚田」(こちら)で書いたように、
写真を撮るために田の中へ入ったり、あぜ道に三脚を立てて穴を開けたり、
自分はそんなことをしなくても、やはり躊躇する気持ちがあったからだ。
が、美山のかやぶきの里は、生活の場であることに変わりはないが、
美山民族資料館もあり、民宿もあり、観光客が来ることで、
歴史的景観の保全と地区住民の生活の維持を両立させているようだ。
ということで、忘れている日本の原風景に触れるために訪れてみた。
美山町北村は現在50戸の集落で、
その内32棟と民族資料館や店舗など6棟の計38棟が
かやぶき屋根の建築だそうだ。
1796年建築のものが最古で、大部分が築100年以上経っているとか、
19世紀中頃までの建物が18戸と江戸時代に建てられたものが多いとか、
築何十年でもう古い部類に入る現代の家からは考えさせられることが多い。
一軒一軒の家が絵になる風景だが、
洗濯物が干してあり、そこには確かに人々の暮らしがある。
かやぶきの屋根には家紋が入っていた。
美山民族資料館には昔懐かしい部屋の様子や道具が展示されているが、
苔むしたこのかやぶきの屋根の方に目が吸い寄せられる。
あちこちに置かれている、これは犬小屋ではありません。
炭焼きした木製の小屋には「放水銃」と書かれています。
かやぶき民家を火災から守るために設置されているようだ。
年に2回、春と秋には放水銃の訓練が実施されるようで、
その訓練を見るためにまた観光客が訪れる…とか。
観光客は何にでも集まる、ものだ。
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