母島上陸 島内観光


母島は観光で周ってくれるガイドさんと車の数が限られていて、
希望者多数で、ふじ丸に乗った最初の日に船上での公開抽選になった。
公平にとの意図だそうだが、グループ毎ではなく個人での抽選だった。
そのため、夫婦でも一方が当たり一方が落ちれば権利を放棄する人が出て、
人数分まで次なる抽選をするという方法で、全部で56人が決まった。
我々は幸いなことに夫婦2人共抽選に当たって参加することができた。

母島は父島からさらに約50km南に位置し、母島へ行くには、
ふじ丸から通船で父島へ渡り、父島から定期船の「ははじま丸」で2時間10分。
つまり、往復4時間20分もかけて船に乗って行かなければならない島なのだ。
一日かけてのツアーなのに、昼食時間もあり、実質の島内観光は2時間半。

父島の人口約2000人に比べて、母島の人口は約450人。

なお、小笠原諸島には、父島列島に、父島、兄島、弟島が、
聟島(婿の意)列島に、婿島、嫁島、媒島(媒酌人の意)が、
母島列島には、母島、姉島、妹島、などの島がある。
父島と母島以外は無人島である。


行ってきま〜す。
すっかり我が家になったふじ丸にしばしの別れを告げて、
父島から定期船「ははじま丸」に乗って一路母島を目指した。

これまで天候には恵まれていたが、ここにきて雨になった。


母島が見えてきて、やがて沖港も見えてきた。
母島到着後、56人の内の半数は島内観光に出かけ、
その間、我々残りの半数は自由散策と早目の昼食を摂り、
午後から何台かの車に分乗して2時間半を島内観光した。


ロース記念館。
耐熱性に優れ加工もし易い母島特産のロース石造りの郷土資料館。
ドイツ人のロルフス(通称ロース)が母島へ来て、母島の開拓に力を尽くし、
石材を発見しその利用法を島民に普及させたことからその石をロース石と言う。


忘れがちであるが、ここは東京都である。
東京都の都道の最南端である。


北港。母島北端の入り江。
昔の北港の桟橋跡が朽ち果てつつもその形を残していた。
この辺りには、戦前は北村集落があり、
1944年の強制疎開直前には約600人が暮していた。


北村小学校跡。戦前はここに集落があったとか。
戦前の母島には沖村にある沖村小学校とこの北村小学校の2校があった。
今ではガジュマルに覆われていて、ジャングルに戻りつつあった。


ガジュマルや観葉植物で知っているポトスやクジャクヤシなどが
亜熱帯のジャングルの様相を成す森でたくさん見られた。


桑の木山。 戦前はオガサワラグワの巨木が繁っていた。
今は外来植物のアカギが繁殖し、固有植物を脅かしており、
小笠原本来の姿を取り戻すためにアカギ除去と植生回復が行われている。

一見緑豊かに見えるアカギの林は、小笠原の自然が破壊された姿でもあるのだ。


こんな風に若い木がどんどん育って、アカギが繁殖していく。

植物の代表的な外来植物がアカギと、「父島」で書いたモクマオウ。
モクマオウは、防潮林などにするために持ち込まれたとか。
海岸や山の尾根など乾いた場所に林をつくり、
林の中には他の植物がほとんど生えない。

アカギは、薪や炭とするために持ち込まれた。
成長が早く元々生えていた植物を覆って日陰にして枯らしてしまうため
固有植物に大きな影響がある。 母島で爆発的に増えているそうだ。


さて、生態系に大きな影響を与える代表的な外来生物がグリンアノールとノヤギである。
(車の中に居たということでガイドさんが捕まえて見せて下さった。後で処分された。)
グリンアノールは緑色できれいなトカゲだが、周りの環境や気分によって色を変える。
父島にはグアムからの貨物に紛れて運ばれ、母島には父島から持ち込まれて、
今では父島と母島の全域に広がり、両島以外では生息していないそうだ。


グリンアノールは、小笠原の固有種や希少種の昆虫を捕食して減少させ、
固有植物の結実にも影響を及ぼして固有種の植物も減少させている。
そこで、侵入防止柵と粘着トラップを使った防除を行っている。

(写真は父島で撮影)

ノヤギ(野生化したヤギ)は小笠原固有種の植物を食べたり、
土を踏みつけて地表をむき出しにして、土砂を海へ流出させて、
サンゴなどの海の生態系にも大きな影響を及ぼしている。
そこで、侵入防止柵を設置して根絶作業を進めている。

さて、母島ではちょっと難しい問題の話が続いたので、
この辺で南国らしいパパイヤの花と実の写真など入れて、
次の話題へ写りましょう。




小笠原のカタツムリの内でカタマイマイと言われるものは、
木の上で暮すものは殻の背が高く小型で木の葉に似た淡い色の殻で、
木の上でも地面に降りても暮すものは扁平な殻を持っていたり、
土の上で暮すものは背が高く土の色に似た暗い色の殻を持つなど、
長い年月をかけてたくさんのいろいろな種類に進化してきた。
パンフレットで見てもたくさんあり、写真のこれらの名前は不明。


ビーデビーデと呼ばれるムニンデイゴ(固有種)。
デイゴの花は沖縄でも咲いているが種が違うようだ。
小笠原の固有種ということになっている。

(父島で撮影)
  

小笠原では1年中ウグイスの鳴き声が聞こえるそうだが、
確かに、歩いていた時に何度もウグイスの鳴き声が聞こえた。

天然記念物で希少種のアカガシラカラスバト(愛称:アカポッポ)は、
希少種であるだけに見ることができなかったので道路標識でお茶を濁そう。
ついでに、小笠原でないと見ることができないオカヤドカリの標識も。
「動物注意」の標識はあちこちでいろいろな動物のものを見るが、
「アカポッポ」も「オカヤドカリ」もここでしか見られない固有のものである。(^^;)

メジロでなくメグロ(特別天然記念物・固有種・希少種)など小笠原は貴重な動植物の宝庫だが、
アカギを始めとする外来種の侵入により絶滅が危惧されるほどに数が減ってしまったものがある。

島を歩き回った服や靴底には、植物の種や虫などがついていることがあるので、
島へ入る時や島から出る時には、靴底を洗いチェックすることも大事だ。

さぁ、父島へ帰って、ふじ丸へ戻って、いよいよ帰路につきます。


父島を午後6時出航。 さよう〜なら〜。
ふじ丸のブイ係留をしてくれたり、ふじ丸から父島へ客を運んでくれたり、
いろいろお世話になった地元の漁船がたくさん見送りにきてくれた。
段々スピードを出すふじ丸に寄り添って猛スピードで追いかけてきていたが、
その姿が小さくなって見えなくなった頃、ふじ丸では夕食の準備が始まった。

父島を5月1日午後6時に出航して、5月3日朝の9時に神戸港へ到着。
楽しかった「ふじ丸で航く小笠原クルーズ」もこれで終わりです。


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