黄龍の不思議な景色


平均標高3000mを越える高地で、大小3000を超す湖沼が
渓谷に沿って棚田のように連なっている不思議な風景を見てきた。
大量の酸化カルシウムを含む水が作り出す棚田のように連なる湖沼を
清流が流れ落ちる風景は、この世のものとも思えない。

黄色い石灰岩盤上を下り落ちる水の流れが黄色い龍のように見えたことから、
「黄龍」と名付けられたとか。


九寨溝からバスで黄龍へ向かう途中で峠を通った時には、
バスが上へ上へと上がるに連れて霧が出てきた。
しかし、その霧も峠の辺りだけで間もなく霧は晴れてきた。

黄龍へ着くと、上りはロープウェイで上がって、下りを歩いて下りた。
ロープウェイ乗り場が標高2900mで、山頂駅が3500m地点だ。
山頂駅でロープウェイを降りてから分岐点まで木道を1時間位歩いた。


写真を撮りながら歩いて行く中で、木々の間から薄い水色の湖が、
棚田のように連なっているのが見えた時には歓声が上がった。


これは分岐点に着く直前の橋から上を見て撮った写真。
体力的にここから上へは登れそうにないという人達はここから下る。


夫と私は、約1時間で五彩池周辺を一周するために上へと登った。
黄龍寺。 3500m以上の高地に建つ立派な寺だ。


最上流部に位置する五彩池。 標高3552m地点。
ブルー、薄いグリーン、エメラルドグリーン、黄色など
多種多様な色の水が見られる。


五彩池は写真の右から左へと水は流れ落ちて行く。
五彩池をぐるりと一周したので、上から見た時の写真。


山の中で何やら目立つこれは、実はお墓だ。
チベット族の人は、タルチョと言って、
チベット仏教のお経を印刷している5色の布を、
旗のようにして紐で結び付けて飾っているが、
お墓にも飾っているようだ。


この辺りの地下水には炭酸カルシウムが大量に含まれるため、
それが湖底や湖岸に乳白色の結晶体として付着して、
互いに連なる不思議な風景になっている。


2時間程かけて歩いて下りる間中このような風景が続く。
写真を撮っているといくら時間があっても足りないから、
心を残しながらも急いで写真を撮って急いで下りる。


とりわけきれいな色の所では感動して見ていると、
つい時間を忘れて見とれてしまい、ふっと気が付いて、
あわてて歩を進めることになる。


石灰分が溶け込んだ水が長年流れ続けて、次第に水分中の石灰分が
枯れ葉や枯れ枝などに付着し、石灰華となって水をせき止めていったのだとか。
この石灰華に覆われた湖沼が連なり、この黄龍の不思議な風景が形作られたのだ。

この辺りでは、乳白色の結晶体として付着した湖底や湖岸に、
たくさんの枯れ葉や枯れ枝などが付着した状態を見られる。


湖沼の底だけでなく地上に出た縁などが白っぽくなっているのは、
沈殿した石灰華が地上に露出した部分のようだ。


炭酸カルシウムの堆積岩が黄色いうろこ状に川の流れを形成している。
1500m位も続いていて、まるで体をくねらせる黄色い龍のように見える?


黄龍では、これまで載せたような不思議な風景に目を奪われるが、
3000m級の山々に囲まれたモミやマツなどの樹木にも目を向けると、
木々の緑が湖面に映り込んできれいだ。


3000m級の山々に囲まれたここには滝だってある。
落差は低いが3段に流れ落ちる滝で、迫力がある。

とにかく驚くばかりの光景の連続で、
写真をたくさん入れ過ぎてしまったが、
興味深い写真をもう3枚だけ入れて終わりにしよう。


でも、高山病のことも書かなければ終わらないんです。


帰りに標高4007mの雪山梁でバスを降りて「4007m」の写真を撮る。
帰りの峠もやはり霧で遠くは見えなくて、近くがわずかに見えるだけ。
チベットで体験した「5190m」に比べれば感激も少ないが、
それでも富士山頂上よりもっと高いのだから感動ものだ。

さて、今後行かれる人のために、ここでも高山病のことに触れておこう。

私は、2005年8月のチベットで高山を初体験した(こちら)。
5200mもの高山は初めてで心配で、事前にネットで情報収集をした。
その結果、高山病予防薬のダイアモックスを飲んでいた私は全く大丈夫だった。
夫の仕事仲間のたくさんの人が具合が悪くなり、嘔吐したりしていたのに、だ。

が、手がしびれるという副作用が出て、その点が少し不安だったので、
次の高地体験の2008年10月の玉龍雪山4506mでは薬を飲まなかった(こちら)。
私は全く大丈夫だったが、酸素入り缶から酸素を吸っている人達もかなり居た。

そして、3回目の高地体験の今年2月の南米・ペルーのクスコは3399mなので、
全然心配をしていなくて、もちろん、薬は飲まなかった。
ところが、頭がクラクラッとしてきて高山病の症状が出た(こちら)。
思うに、初めて参加した団体ツアーで、強行スケジュールの上に、
前日は夜中の帰着で早朝出発という睡眠不足(3時間睡眠)のせいと思われた。

そこで、4回目高地体験の今回もやはり団体ツアーであるということで、
体調によっては具合が悪くなるという経験から、今回は薬を飲んだ。
最高高度で3552mだが4時間のハイキングでかなり歩くことを考慮した。
それに、具合が悪くなると楽しめないからということも考えた。
ツアー仲間の中にやはり具合が悪くなった人が何人か居たようで、
この程度の高度でもやはり油断は大敵だ。


大勢の観光客がぞろ歩く中を重い荷物を背負って登る人が居た。
高山病予防には、心臓や肺に負担がかからないよう、アルコール禁止、食事は控えめに、
大声で話さない、走らない、重い荷物を持たない、などなどの注意が必要だが、
酸素の薄い高地で暮らしている人々はこんな重い荷物も運べるのだ。
どんな環境にも適応できるように慣れることができる人間の体も素晴らしい。



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